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体の中のにおい

 

娘が産まれ、初めて二人きりになった夜、

彼女の頭のてっぺんを、犬のようにくんくん嗅ぎました。 

 

・・・い~いにおい・・・なんとも美味しそうな・・・

 

遠い昔嗅いだことがあるような・・・懐かしいにおい。

 でも・・・今まで出逢った何のにおいとも例えることが出来ないような、初めて嗅ぐにおい。

 

おっぱいの匂いともちがいました。

それは・・・私の体液がこびりついたにおい。

 

  「あぁ、これって、私の中のにおいか・・・」

 

汗や、自分の体から排出される不要物しか嗅いだことがなかったから、

残念だけど、自分って、くさいものだと思っていました。

 

でも、彼女の体をまとっていた私自身のにおいは、

米のとぎ汁のような、かすかな匂いだけど、ほのかに甘く、どこか香ばしく・・・

 

 

私がいつもおいしいなぁ~って食べているものが、私の体液や肉を実際に作っているんだと感じました。

 

きっと、想像している以上に生きている体の内部というのは、かぐわしく、美しい世界なんでしょう。

 

だから、彼女はもっともっとこの中に浸っていたかったんじゃないかなぁ。

 

予定日3日過ぎて出てきたときでも、まだちょっと不服そうでしたから。