空母のような

赤の織り布を張った額
赤の織り布を張った額

 

思い返すと、私の小学1,2年生の担任の先生が、みんな違うデザインを見抜いて扱ってくださった偉大な方でした。

 

あの子とこの子への接し方が違うんです。それは決して差別とはちがうもので、みんなの違う音色を聞き分けて、たたき分けていたというか・・・

 

その空間にはひとりひとり居場所があり、認められているという心地よさがありました。

 

 

校庭一杯に散らばって遊ぶ1年1組の生徒たち。

ジャングルジムに登る子、のぼり棒で遊ぶ子、道具をつかわずただ走り回っている子。

 

ピーッっと笛が鳴ると、磁石に砂鉄が吸い寄せられるように、小さなつぶつぶが駆け寄ってきます。

 

我先にと先生の前に整列する生徒たち。

先生も笑っています。子どもたちも笑っています。

 

赤いシャツ。そう、いつも赤の長袖シャツを着ていた先生。

1年1組のチームカラーが赤だった。

 

先生はおっきくて、あったかくて、抱きつくとふわっとしていて・・・・・

強くて、おっかなくて、面白くて・・・・

 

 

体の弱い子、家庭に問題のある子、落ち着きのない子・・・

今思うと、決して揃った粒ではなかったはずなのに、

 

それを問題とは先生は見ていなかったなぁ。

その子と、その子を心配する母親ごと一緒に抱きいれて、空を飛んでいたように感じます。

 

そう空母のような方。

 

先生の顔、声を良く覚えています。

2年間、彼女の顔、やることをずっと私は眺めてきたんだと思います。

 

 

当時母から聞いたことがあります。

2年生の最後の通信簿を見て、心配した母がこのままでいいのかと先生に聞くと、

 

「のんちゃんは、技能教科(体育・図工・音楽)がいいですね。こういう子はあとから伸びるんです。勉強はやろうと思えばいつでもやれるけど、技能は誰でも伸ばせるものではないから」

 

その言葉を信じた母は、私に勉強のことを中2になるまで一切言うことはありませんでした。

 

 

わたしにとって、「人生は誰と会うか」にかかっているようです。

大好きな祖母が亡くなり、空ばかり見上げる少女が次に地上で注目した大人は、大きな大きな人でした。

 

 

「先生・・・わたしね、先生みたいな先生になりたいなぁって・・・・」

 

「へぇ、のんちゃんがねぇ(笑) ずっと、そうおもってた?」

 

「うううん、きょうね、気づいた!」

 

「きょうかぁ~(笑)」

 

 

目を閉じると、先生の顔と笑い声がきこえてきます。